オフィスビルを相続する際の流れや注意点
いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
さて、オフィスビルを相続することになった場合、どのような手続きが必要になるでしょうか。
通常の不動産や車、現金の相続とは違い、オフィスビルならではの注意ポイントがあります。
また、相続の流れを事前に知っておくことで、相続完了までスムーズに進めることができるでしょう。
そこで、今回はオフィスビルを相続する際の流れや注意点について、解説いたします。
“オフィスビルの相続”はなかなか特殊なケースかと思いますが、だからこそ分かりにくい点も多いかと思いますので、ご参考になれば幸いです。
この記事から分かること
オフィスビルを相続するまでの流れ
相続人が一人しかいないのであれば問題ありませんが、多くのケースにおいて相続人は複数人となるため、相続に関する協議が必要となるでしょう。
さらに、どの財産を誰が相続し、財産の按分をどのように取り決めるのかでトラブルになることも多いです。
そのため、相続をする場合にはまず法定相続人を確定させ、法定相続按分と遺言書の有無を確認した後に相続登記する必要があります。
この章ではそれぞれの項目について、詳しくポイント解説します。
法定相続人を確認する
「法定相続人」とは、法律によって相続の権利を得た者のことです。
そして、実際に相続する者を「相続人」と呼びます。
法定相続人と相続人に違いはないように思えますが、法定相続人が必ずしも相続人になるわけではないため、このように法律上では分けた表現となっています。
たとえば相続する財産がオフィスビルしかなく、さらに収益が赤字だった場合は、「相続放棄」をする法定相続人もいるでしょう。
この場合は、法定相続人と相続人の数は合わなくなります。
このようなケースがあることから、相続をする場合にはまず法定相続人を確定させ、その上で相続人を確定される流れとなります。
なお、相続税には基礎控除があり、3,000万円+(法定相続人×600万円)で算出することができ、相続放棄した法定相続人も算出人数に加算することができます。
そのため、法定相続人と相続人の両方を確定させることが重要です。
相続人と遺産分割の協議をする
相続人が確定できれば、遺産分割協議を行い財産の按分を決めます。
相続財産の按分方法には法定按分があるため、遺産分割協議では法定按分をベースに協議するのが一般的です。
遺言書がある場合は原則遺言書の内容が優先されますが、相続人全員の合意があれば遺言書の内容を否定し、遺産分割協議の内容を優先させることも可能です。
また、遺産分割は法定按分以外にも、寄与分や生前贈与も考慮する必要があります。
そのため、当事者である相続人だけで進めた場合には協議が難航する可能性が高いため、相続診断士や司法書士、弁護士に相談しましょう。
オフィスビルの相続登記をする
遺産分割協議がまとまり、全員が遺産分割協議書に証明押印することで、オフィスビルの所有者が決定します。
そして、所有者が決まれば相続登記をすることができ、相続人はオフィスビルの所有権を得ることができます。
なお、2023年の時点では相続登記は義務ではなく任意ですが、2024年4月1日より相続登記が義務化となり、相続を知った時から3年以内に相続登記をしなければなりません。
万が一相続登記をしなかった場合は罰則が発生し、不動産を所有する相続人全員が罰則対象となるため、必ず相続登記は行いましょう。
オフィスビルを相続する場合の費用
この章では、オフィスビルを相続する際の費用について、解説します。
相続にかかる費用については、遺産分割協議書作成費用と相続費用の2つがありますが、前者は相続人全員で、後者はオフィスビルの所有者が負担します。
遺産分割協議書作成費用
遺産分割協議書の作成は依頼する士業によって費用が異なり、相場は次のようになります。
士業 |
相場 |
弁護士(※) |
300万円の場合:利益×16% 300超~3,000万円以下:利益×10%+18万円 3,000万円超~3億円以下:利益×6%+138万円 3億円以上:利益×4%+738万円 |
税理士 |
利益×0.5%~1.0% |
司法書士 |
5万円~10万円 |
上図のように、依頼する専門家によって費用は大きく変わりますが、遺産分割の状況によって依頼先を使い分ける必要があります。
たとえば遺産分割が争乱に発展し交渉による解決を依頼する場合には、弁護士に依頼する必要があります。
なぜなら、争乱を解決するための弁理行為は弁護士の独占業務となっており、他の士業では対応できないからです。
一方、争乱はないものの相続財産が多く、相続税の申告が複雑になる場合には税理士に依頼することが多く、争乱もなく相続税の申告も容易であれば、司法書士への依頼がおすすめです。
このように、相続における遺産分割の状況によって、どの士業に依頼するのかを決めることが重要です。
相続登記費用
相続登記をするためには、登録免許税という税金を支払う必要がありますが、相続するオフィスビルの固定資産税評価額×0.4%で計算することができます。
さらに、これ以外にも依頼する専門家への報酬や諸経費などがかかるため、事前に見積を取得し確認しましょう。
オフィスビルを相続する際の注意点
オフィスビルは他の不動産にはないリスクがあるため、事前に把握する必要があります。
相続した人の中には、資産価値が高いからといって積極的に相続を主張し、後悔する人もいます。
そこで、オフィスビルが相続対象になっている場合には、事前にこの章で解説する注意点をチェックし、失敗や後悔のない相続にしましょう。
収益の継続性を確認する
オフィスビルは土地や建物の規模が大きいことから相続税は高くなる一方、継続して収益を得られるのであれば、価値は高いといえます。
しかし、経済状況やオフィスビルが建っているエリアの人気が変化することで退去がでてしまい、空きテナントになってしまうこともあります。
その場合は次の入居者が決まるまでは収益が減少してしまい、相続税のマイナスを回収するまでの時間が長くなってしまうでしょう。
そのため、相続するオフィスビルの収益内容や経済動向を注視する必要があります。
建物のメンテナンス費用を注視する
オフィスビルの運営管理が負担になるケースは、前述した空きテナントが発生するリスクだけではありません。
オフィスビルは築年数が経過することで建物の劣化や設備の破損が進み、メンテナンス費用は増加していきます。
つまり、家賃を上げなければオフィスビルの収益は下がる一方となってしまいますが、家賃を上げれば空きテナントが増える可能性が高くなるでしょう。
このように、オフィスビルの価値は「収益」と「支出」のバランスによって決まるため、相続するオフィスビルの状況を正しく把握することが重要です。
相続の方法に注意する
相続には「換価分割」「代償分割」「共有分割」の3種類があり、次のような内容となります。
- 換価分割:オフィスビルを売却し、売却益を相続按分する
- 代償分割:オフィスビルを所有し、他の相続人に「代償金」を支払い、相続按分とする
- 共有分割:オフィスビルを法則按分に沿った内容で、相続人全員で共有登記する
換価分割とはオフィスビルを相続人の1人が所有するものの売却し、売却益を相続按分する方法です。
この方法は相続をスムーズに進められる一方、オフィスビルを手放す必要があります。
一方、代償分割はオフィスビルの所有権は維持することができますが、他の相続人に代償金を支払う必要があります。
このように、換価分割と代償分割にはそれぞれメリットとデメリットがありますが、オフィスビルを所有し代償金も支払わない方法を選択するのであれば、共有分割という選択肢を知っておきましょう。
この方法であればオフィスビルを法定按分に沿った内容で相続人全員が登記するため、換価分割と代償分割のデメリットを解消することができます。
ただし、共有分割のオフィスビルを将来売却する場合、全員の合意が必要です。
また、誰がオフィスビルの管理や運営をするのかを決める必要もあるため、相続後にトラブルになるリスクがあります。
このことからも、どの方法を選択するのかを相続人で十分に協議し、全員が納得した上で選択することが重要といえるでしょう。
まとめ
オフィスビルを相続するためには、法定相続人や相続人を確定し、協議した上で相続登記をする必要があります。
しかし、相続内容によっては遺産分割協議がまとまらず、相続が長引いてしまうケースもあります。
このような失敗をしないためにも、相続が発生する前に法定相続人である程度話し合いを行い、方針を立てておく必要があるでしょう。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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